朝の渋滞のピークは過ぎていたようで、思ったより時間もかからずに自宅へと到着した俺たちは、家の前に車を停めて降り立った。
木造ボロアパートの前に、フェラーリ・テスタロッサ。とってもシュールな光景だ。
思わず携帯で写真を撮りたい衝動に駆られていると、
「斉藤さん」
橘が声を掛けてきた。
「ここですか」
「そうです。まあ、狭いですがとりあえず中に入って貰って」
さてさて、一体どんな方法で幽霊を追っ払うのか、と楽しみにしながらアパートの階段へと促すと、
「視るまでもありませんね。ここで失礼します」
「へっ!?」
予想外の言葉に仰天した。
「な、何で!?まだ何も見てもらってないのに……」
「失礼ですけどあなた、霊なんて見たこともないでしょう」
どきり、と心臓が跳ねた。
「そ、そんなこと……」
「もしもあなたに見えてしまったとしたら、相当強力で危険な霊かもしれないと思って来てみたのですが……。どうみてもこのアパートにそんな強い霊がいるようにはみえません」
「……外からでもわかるんですか」
「ええ、わかります」
橘はものすごく厳しい視線を送って来た。
「どういうつもりか知りませんが、冷やかしに付き合っていられるほど暇ではありませんので」
「いや、そうじゃなくてですね、実は───」
慌てて名刺を出そうとしたが、聞く耳を持ってくれない。
「世の中、霊など見たくないと思っても見えてしまう人がたくさんいるんです。あなたがそういったものに関わらずに済んでいるとしたら、とても恵まれているんだということを自覚して欲しいですね」
「あの───!」
橘は自分の言いたいことだけ言うと、再びフェラーリに乗り込んで、あっという間に走り去ってしまった。
「……………」
後に残された俺は、突然のことにただ立ち尽くすばかりだ。
けれど、一つだけ収穫があった。
「…………ホンモノだ」
橘義明は、ホンモノの霊能力者だ。
これを逃す手はない。
俺はアパートへと駆け込むと、まずは宇都宮までの最短ルートを調べることにした。
02 ≪≪ ≫≫ 04
木造ボロアパートの前に、フェラーリ・テスタロッサ。とってもシュールな光景だ。
思わず携帯で写真を撮りたい衝動に駆られていると、
「斉藤さん」
橘が声を掛けてきた。
「ここですか」
「そうです。まあ、狭いですがとりあえず中に入って貰って」
さてさて、一体どんな方法で幽霊を追っ払うのか、と楽しみにしながらアパートの階段へと促すと、
「視るまでもありませんね。ここで失礼します」
「へっ!?」
予想外の言葉に仰天した。
「な、何で!?まだ何も見てもらってないのに……」
「失礼ですけどあなた、霊なんて見たこともないでしょう」
どきり、と心臓が跳ねた。
「そ、そんなこと……」
「もしもあなたに見えてしまったとしたら、相当強力で危険な霊かもしれないと思って来てみたのですが……。どうみてもこのアパートにそんな強い霊がいるようにはみえません」
「……外からでもわかるんですか」
「ええ、わかります」
橘はものすごく厳しい視線を送って来た。
「どういうつもりか知りませんが、冷やかしに付き合っていられるほど暇ではありませんので」
「いや、そうじゃなくてですね、実は───」
慌てて名刺を出そうとしたが、聞く耳を持ってくれない。
「世の中、霊など見たくないと思っても見えてしまう人がたくさんいるんです。あなたがそういったものに関わらずに済んでいるとしたら、とても恵まれているんだということを自覚して欲しいですね」
「あの───!」
橘は自分の言いたいことだけ言うと、再びフェラーリに乗り込んで、あっという間に走り去ってしまった。
「……………」
後に残された俺は、突然のことにただ立ち尽くすばかりだ。
けれど、一つだけ収穫があった。
「…………ホンモノだ」
橘義明は、ホンモノの霊能力者だ。
これを逃す手はない。
俺はアパートへと駆け込むと、まずは宇都宮までの最短ルートを調べることにした。
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