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短編Index


 昼間、快晴の空の下、庭をめいっぱい走り回って遊んだ息子は歯を磨きながらとても眠そうだ。
「今日も美弥の隣で寝るの?」
「うん」
 最近は妹の世話を焼くのが楽しいようで、寝るときも隣に寝たがる。
 娘はまだ自分の隣で寝たがるから、必然的に息子とは娘を挟んで離れて眠ることになるのだが、そんなことも気にならないらしい。
 昔はトイレの中にまでついて来たがったものだけど、と笑みがこぼれた。
 風邪を引かないようにうがいを念入りにさせてから、一緒に寝室へと向かう。
 今日は珍しく早く帰った夫が娘を寝かしつけてくれたのだが、一緒になって寝てしまってらしく起きて来なかった。
 事業を営んでいる夫は多忙だ。なかなか家で過ごす時間が取れない。
 だから家にいられる時は出来るだけ子供たちと一緒に過ごしてもらうように決めていた。
 その分夫婦の会話は減ってしまうけれど仕方ない。子供たちにはなるべく寂しい思いはさせたくない。
 寝室へ入ると、息子は先に寝てしまった父親と妹の間に割って入るようにして布団に潜り込み、目の前にある妹の頭を満足そうに撫でてから眼を閉じた。
 目にした人間すべてを笑顔にしてしまうような、可愛らしい仕草。
 それを見届けてから、リビング戻って照明のスイッチを切った。
 暗くなった部屋で、ふと家族写真が眼に入る。
 今年の夏、庭で取ったものだ。
 たかだか半年しか経っていないのに、額縁の中の子供達はずいぶんと幼くみえる。
 この調子では一年後は一体どうなってしまうことだろう。
 想像は十年後、二十年後と膨らむばかりだ。
 もちろん反抗期だってきっと来る。ケンカもたくさんするだろう。
 けれど、今の時期の愛しさを思えば、どんなトラブルも乗り越えていけるのではないかと思う。
 もう一度、ガラス戸の鍵を確認しようとカーテンをめくると、庭に白いものがみえた。
 雪だ。
 いつの間に降り出したのか、すでにうっすらと積もり始めている。
 明日、この雪をみて大はしゃぎする息子と娘が眼に浮かんだ。
 いつものように早朝に出かけてしまうであろう夫のために、ふたりの笑顔を写真に撮ってあげようと決めてカーテンを閉めた。
 寝室に戻るとそっくりの寝顔が3つ並んでいる。
 その寝顔たちを起こさないようにゆっくり布団に潜り込むと、なんともいえない安堵感が胸に広がった。
 穏やかな寝息の三重奏を聴きながら、佐和子はそのまま瞳を閉じた。

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